騎士道物語を読みふける郷士ドン・キホーテは、自らを遍歴の騎士だと思い込み、理想の姫「ドゥルシネア」を胸に、従者サンチョ・パンサを連れて冒険の旅へと出発する。
この老人の妄想が、やがて若い恋人たちの物語と交差していく。

Don Quixote
情熱の街に、恋と剣と、風車へ挑む夢が舞う。
騎士道物語を読みふける郷士ドン・キホーテは、自らを遍歴の騎士だと思い込み、理想の姫「ドゥルシネア」を胸に、従者サンチョ・パンサを連れて冒険の旅へと出発する。
この老人の妄想が、やがて若い恋人たちの物語と交差していく。
バルセロナの広場
宿屋の娘キトリと、貧しい床屋の青年バジルは相思相愛。
だが父ロレンツォは、キトリを裕福で気取り屋の貴族ガマーシュと結婚させようとしている。街には闘牛士エスパーダや街の踊り子たちが集い、活気にあふれている。そこへドン・キホーテが現れ、キトリを理想の姫ドゥルシネアだと思い込む。父の反対に業を煮やしたキトリとバジルは、混乱に乗じて駆け落ちする。
ジプシーの野営と夢の場
追手を逃れた一行はロマ(ジプシー)の野営地へたどり着く。
ドン・キホーテは回転する風車を巨人と思い込んで突進し、跳ね飛ばされて気を失う。その夢の中で、森の女王やキューピッド(アモル)に囲まれ、理想の姫ドゥルシネア(キトリと同じ踊り手が演じる)が優雅に舞う幻想的な「夢の場」が広がる。古典的で清らかなこの場面は、陽気な喜劇の中の白いオアシスである。
結婚式
酒場で、バジルは剣で自らを刺したふりをする狂言自殺を演じる。
情にほだされたドン・キホーテのとりなしで、父ロレンツォはついにキトリとバジルの結婚を認める。祝宴では、二人による華麗なグラン・パ・ド・ドゥが披露され、キトリの32回転フェッテとバジルの跳躍が客席を沸かせて幕となる。
結婚式で踊られるキトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥは、ガラ公演でも単独で上演される超人気ナンバー。扇を手にしたキトリのヴァリエーションと32回転フェッテ、バジルの大きな跳躍と回転が畳みかけるように続き、古典バレエの華やかさの極致を見せる。
跳躍・回転・情感のすべてが求められるキトリは、バレリーナにとって憧れの当たり役。第1幕の跳ねるような登場から、夢の場の気高いドゥルシネア、第3幕の輝かしいフェッテまで、一人の踊り手が対照的な魅力を演じ分ける。
闘牛士エスパーダとメルセデスの情熱的な踊り、街の踊り子たちのカスタネットを打ち鳴らす群舞など、スペイン舞踊の色彩が全編を彩る。物語の推進力よりも、踊りそのものの祝祭性を楽しむ作品である。
『ドン・キホーテ』は、難しい予備知識なしに楽しめる陽気な喜劇バレエの代表作です。ポイントは「主役はドン・キホーテではなく、恋人同士のキトリとバジル」という点。この二人の恋の駆け引きを追えば物語はすっきり分かります。見どころは何といっても第3幕のグラン・パ・ド・ドゥ。キトリの扇のヴァリエーションと32回転フェッテ、バジルの跳躍は、初めての観劇でも思わず拍手したくなる華やかさです。スペイン情緒あふれる音楽と群舞の祝祭感を、肩の力を抜いて味わってください。
上演時間・あらすじ・登場人物は上演する版によって異なる場合があります。
観劇の際は、主催者の公式情報もあわせてご確認ください。