Ballet Map.
赤い衣装のキトリとバジルが街の広場で踊る『ドン・キホーテ』の水彩画

Don Quixote

ドン・キホーテ

情熱の街に、恋と剣と、風車へ挑む夢が舞う。

作曲
ルートヴィヒ・ミンクス
初演
1869
構成
全3幕(プロローグ付き)
上演
130

あらすじ

プロローグ

騎士道物語を読みふける郷士ドン・キホーテは、自らを遍歴の騎士だと思い込み、理想の姫「ドゥルシネア」を胸に、従者サンチョ・パンサを連れて冒険の旅へと出発する。

この老人の妄想が、やがて若い恋人たちの物語と交差していく。

第1幕

バルセロナの広場

宿屋の娘キトリと、貧しい床屋の青年バジルは相思相愛。

だが父ロレンツォは、キトリを裕福で気取り屋の貴族ガマーシュと結婚させようとしている。街には闘牛士エスパーダや街の踊り子たちが集い、活気にあふれている。そこへドン・キホーテが現れ、キトリを理想の姫ドゥルシネアだと思い込む。父の反対に業を煮やしたキトリとバジルは、混乱に乗じて駆け落ちする。

第2幕

ジプシーの野営と夢の場

追手を逃れた一行はロマ(ジプシー)の野営地へたどり着く。

ドン・キホーテは回転する風車を巨人と思い込んで突進し、跳ね飛ばされて気を失う。その夢の中で、森の女王やキューピッド(アモル)に囲まれ、理想の姫ドゥルシネア(キトリと同じ踊り手が演じる)が優雅に舞う幻想的な「夢の場」が広がる。古典的で清らかなこの場面は、陽気な喜劇の中の白いオアシスである。

第3幕

結婚式

酒場で、バジルは剣で自らを刺したふりをする狂言自殺を演じる。

情にほだされたドン・キホーテのとりなしで、父ロレンツォはついにキトリとバジルの結婚を認める。祝宴では、二人による華麗なグラン・パ・ド・ドゥが披露され、キトリの32回転フェッテとバジルの跳躍が客席を沸かせて幕となる。

見どころ

第3幕グラン・パ・ド・ドゥ

結婚式で踊られるキトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥは、ガラ公演でも単独で上演される超人気ナンバー。扇を手にしたキトリのヴァリエーションと32回転フェッテ、バジルの大きな跳躍と回転が畳みかけるように続き、古典バレエの華やかさの極致を見せる。

キトリという当たり役

跳躍・回転・情感のすべてが求められるキトリは、バレリーナにとって憧れの当たり役。第1幕の跳ねるような登場から、夢の場の気高いドゥルシネア、第3幕の輝かしいフェッテまで、一人の踊り手が対照的な魅力を演じ分ける。

スペインの色彩と群舞

闘牛士エスパーダとメルセデスの情熱的な踊り、街の踊り子たちのカスタネットを打ち鳴らす群舞など、スペイン舞踊の色彩が全編を彩る。物語の推進力よりも、踊りそのものの祝祭性を楽しむ作品である。

主要登場人物

キトリ
宿屋の娘。バジルの恋人で、物語の実質的なヒロイン。快活で意志が強い。
バジル
貧しい床屋の青年。キトリの恋人。機転を利かせた狂言自殺で結婚を勝ち取る。
ドン・キホーテ
騎士道物語に憧れる老郷士。キトリを理想の姫ドゥルシネアと思い込む、狂言回しの脇役。
サンチョ・パンサ
ドン・キホーテの従者。滑稽で人間味あふれる従者役。
ガマーシュ
キトリの父が望む結婚相手。裕福だが気取り屋の貴族で、喜劇的に描かれる。

有名な場面・踊り

  • 第3幕 キトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥ(扇のヴァリエーション、32回転フェッテ)
  • 夢の場 ドゥルシネアと森の女王、キューピッドのヴァリエーション
  • 闘牛士エスパーダとメルセデスの踊り
  • 第1幕 街の踊り子たちの群舞

この作品で出会う用語

初めて観る人へ

『ドン・キホーテ』は、難しい予備知識なしに楽しめる陽気な喜劇バレエの代表作です。ポイントは「主役はドン・キホーテではなく、恋人同士のキトリとバジル」という点。この二人の恋の駆け引きを追えば物語はすっきり分かります。見どころは何といっても第3幕のグラン・パ・ド・ドゥ。キトリの扇のヴァリエーションと32回転フェッテ、バジルの跳躍は、初めての観劇でも思わず拍手したくなる華やかさです。スペイン情緒あふれる音楽と群舞の祝祭感を、肩の力を抜いて味わってください。

豆知識

  • 物語の題名は「ドン・キホーテ」だが、主役は恋人キトリとバジルで、ドン・キホーテ自身は物語を動かす狂言回しの脇役。この点はしばしば誤解される。
  • 音楽を書いたミンクスは、後述の『ラ・バヤデール』も手がけた、プティパ時代を代表するバレエ専属作曲家。
  • 1900年のゴルスキー改訂版は、リアルな群衆描写を取り入れて作品を大きく生き生きとさせ、現在の上演の土台となった。

上演時間・あらすじ・登場人物は上演する版によって異なる場合があります。観劇の際は、主催者の公式情報もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q.ドン・キホーテの主役は誰ですか?
A.実質的な主役は宿屋の娘キトリと床屋の青年バジルの恋人同士です。ドン・キホーテ自身は物語を動かす狂言回しの脇役で、しばしば誤解される点です。
Q.ドン・キホーテのあらすじは?
A.結婚を反対された恋人キトリとバジルが、駆け落ちや狂言自殺の末に周囲を巻き込みながら結婚を勝ち取る、陽気でスペイン情緒あふれる喜劇です。
Q.一番の見どころはどこですか?
A.第3幕の結婚式で踊られるキトリとバジルのグラン・パ・ド・ドゥです。扇のヴァリエーションと32回転フェッテ、バジルの跳躍が客席を沸かせる名場面で、ガラ公演でも単独上演されます。
Q.プティパ版とゴルスキー版はどう違いますか?
A.1869年のプティパ原版に対し、1900年のゴルスキー版はリアルな群衆描写や劇的な演出を加えて作品を生き生きとさせました。現在上演される多くの版はゴルスキー版を基礎にしています。

次に観るなら