スコットランドの朝霧の森で、手を伸ばすジェームズと宙を舞うシルフィードを描いたオリジナル水彩画

La Sylphide

ラ・シルフィード

触れられる夢を求めた瞬間、彼は帰る場所を失っていく。

作曲
ヘルマン・セヴェリン・ルーヴェンシュキョル
初演
1836
構成
全2幕
上演
70

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あらすじ

スコットランドの農村から霧の森へ誘うシルフィードと、彼女を追うジェームズの水彩画
第1幕

結婚式の朝

スコットランドの農家。

今日は青年ジェームズとエフィの結婚式だが、彼は朝から、自分にだけ姿を見せる森の妖精シルフィードに心を奪われている。家族と友人が祝いの支度を進めるなか、占いをする老女マッジが現れ、エフィはジェームズではなくグァーンと結ばれると告げる。腹を立てたジェームズはマッジを追い出すが、シルフィードは現れては消え、現実の幸福から彼を引き離していく。式が始まろうとする瞬間、ジェームズはエフィと家を残し、シルフィードを追って森へ走る。

朝霧と白樺の森で、妖精たちの間を追いかけるジェームズとシルフィードの水彩画
第2幕

森と魔法のショール

森ではシルフィードの仲間たちが集まり、ジェームズは人間の世界にはない自由と軽やかさに包まれる。

しかし、近づけば逃げる彼女を自分のそばへ留めることはできない。そこへマッジが現れ、魔法のショールをシルフィードの肩へ掛ければ逃げられなくなると教える。ジェームズが言葉を信じてショールを巻くと、シルフィードは力を失い、仲間たちに抱えられて息絶える。遠くにはエフィとグァーンの婚礼の列が見え、ジェームズは、自分が捨てた現実と壊した夢を同時に悟る。マッジが勝利を見届けるなか、彼も絶望して倒れる。

見どころ

1832年版と1836年版は、同じ物語の別作品

パリ初演のタリオーニ版がロマンティック・バレエの象徴となった一方、今日まで舞台上の伝統として残る中心は、ブルノンヴィルがコペンハーゲンで作った1836年版。音楽も振付も異なるため、初演年だけを見て一つの版だと思わないことが作品理解の入口になる。

速い足さばきと静かな上半身

ブルノンヴィル様式は、床を細かく刻む足、軽い跳躍、素早い方向転換に対し、腕と顔を過度に誇張しない端正さが特徴。男性のジェームズにも細かな跳躍と音楽性が求められ、シルフィードの浮遊感と対等に物語を担う。

白い森が生んだバレエ・ブラン

第2幕では、白いロマンティック・チュチュをまとった妖精たちが霧の森を満たす。ポワント、パ・ド・ブレ、軽い跳躍が、地面に縛られない存在を見せる。後の『ジゼル』へ続く白い精霊群舞の原型として、バレエ史そのものを目で見られる場面。

愛ではなく、所有したい心が悲劇を生む

ジェームズはシルフィードを愛しているつもりでも、最後には逃げられない形で手元へ置こうとする。マッジのショールは魔法の道具であると同時に、触れられない夢を所有物へ変えようとした選択の象徴。結末を知って観るほど、幸福な踊りの中に危うさが見える。

主要登場人物

魅了され追いかける結婚式から去る思い続け結婚へショールで復讐結婚相手を予言ジェームズ結婚式の朝シルフィード森の妖精エフィ婚約者グァーンエフィを思うマッジ占いの老女
愛・恋家族・つながり対立・裏切り魔法・呪い
人物にふれると、その関係が浮かび上がります。※版により設定が異なる場合があります。
シルフィード
ジェームズにだけ姿を見せる森の妖精。彼を現実の結婚から幻想の森へ誘うが、人間の所有物にはなれない。
ジェームズ
エフィとの結婚式を迎えた青年。目の前の幸福より、手の届かないシルフィードを追う選択をする。
エフィ
ジェームズの婚約者。結婚式当日に置き去りにされ、のちに自分を思い続けていたグァーンと結ばれる。
グァーン
ジェームズの友人または従弟として描かれ、エフィを思っている青年。版や日本語表記によりグエンとも呼ばれる。
マッジ
未来を占う老女。追い出された恨みからジェームズを罠へ導き、魔法のショールで悲劇を起こす。
アンナ
ジェームズの母。家と結婚式を取り仕切り、現実の共同体を代表する人物。

有名な場面・踊り

  • 第1幕 ジェームズとシルフィードの出会い
  • 第1幕 スコットランドの婚礼の踊り
  • ジェームズのヴァリエーションとブルノンヴィル特有の跳躍
  • 第2幕 シルフィードたちのバレエ・ブラン
  • シルフィードとジェームズのパ・ド・ドゥ
  • 魔法のショールとシルフィードの死

初めて観る人へ

最初に『ジェームズは悪人だから婚約者を捨てた』と決めつけず、現実の幸福と、名前も持たない理想の間で揺れる人物として観ると面白くなります。第1幕では、エフィ、家族、婚礼の輪へ彼がどれだけ馴染めていないか。第2幕では、シルフィードへ近づくほどなぜ距離が生まれるかを追ってください。足元はブルノンヴィル特有の細かなステップと軽い跳躍、上半身は誇張を抑えた自然さに注目。最後のショールは『愛する』と『自分のものにする』の違いを可視化します。『ジゼル』と続けて観ると、白い精霊の群舞が、片方では誘惑、もう片方では救済へ働く対照も見えてきます。

豆知識

  • 1832年のフィリップ・タリオーニ版と、1836年のオーギュスト・ブルノンヴィル版は、物語の骨格を共有しながら音楽と振付が異なる。現在の上演で中心となるのはブルノンヴィル版である。
  • 1836年のブルノンヴィル版では、ルシール・グラーンがシルフィードを初演し、振付家ブルノンヴィル自身がジェームズを踊った。
  • デンマーク王立バレエはブルノンヴィル作品を途切れない伝統として継承し、2026年には同版初演190年を記念するプログラムでも『ラ・シルフィード』を上演する。
  • デンマーク王立劇場は、本作をブルノンヴィル作品の中で幸福な結末を持たない例外的な作品と紹介している。
  • 新国立劇場の2016年上演記録では各幕約35分。2027年公演はフォーサイス作品との二本立てで、全体約2時間を予定している。

上演時間・あらすじ・登場人物は上演する版によって異なる場合があります。観劇の際は、主催者の公式情報もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q.バレエ『ラ・シルフィード』のあらすじは?
A.結婚式の朝、青年ジェームズが自分にだけ見える森の妖精シルフィードに心を奪われ、婚約者エフィを残して森へ向かう物語です。彼は妖精をそばへ留めようと魔法のショールを使いますが、それがシルフィードの命を奪い、自分もすべてを失います。
Q.『ラ・シルフィード』の結末はどうなりますか?
A.ジェームズがマッジから受け取った魔法のショールをシルフィードへ巻くと、彼女は力を失い死んでしまいます。遠くではエフィとグァーンの婚礼が進み、現実と夢の両方を失ったジェームズも絶望して倒れます。
Q.1832年版と1836年ブルノンヴィル版は何が違いますか?
A.1832年のパリ初演はフィリップ・タリオーニ振付、マリー・タリオーニ主演の作品です。ブルノンヴィルは1836年にヘルマン・ルーヴェンシュキョルの音楽で別の振付を制作しました。現在広く上演される伝統は、主に後者を基礎としています。
Q.『ラ・シルフィード』と『レ・シルフィード』は同じ作品ですか?
A.別作品です。『ラ・シルフィード』はジェームズ、エフィ、マッジが登場する全2幕の物語バレエ。『レ・シルフィード』はフォーキン振付、ショパンの音楽による物語を持たない一幕の作品で、詩人と白い精霊たちが踊ります。
Q.『ラ・シルフィード』と『ジゼル』の違いは?
A.どちらもロマンティック・バレエと白い精霊群舞を代表しますが、物語の働きが異なります。『ラ・シルフィード』では妖精への執着が現実を壊し、『ジゼル』では精霊となったヒロインの愛が裏切った男性を救います。
Q.シルフィードとは何ですか?
A.空気の精・森の妖精を指します。作品では、人間の暮らしの外にある自由や理想を体現し、ジェームズにだけ姿を見せて彼を森へ誘います。
Q.2027年の東京公演はいつですか?
A.新国立劇場バレエ団が2027年2月19日から23日まで、新国立劇場オペラパレスで『精確さによる目眩くスリル』との二本立てを予定しています。一般発売は2026年11月21日です。最新の出演者と販売状況は主催者公式情報をご確認ください。

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