ジゼルの一場面

Giselle

ジゼル

裏切りに散った乙女は、精霊となってなお愛する人を守る。

作曲
アドルフ・アダン
初演
1841
構成
全2幕
上演
110

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あらすじ

収穫祭の村で幸せそうに踊るジゼルとアルブレヒトの水彩イラスト
第1幕

ぶどう畑の広がる村。

心臓の弱い純朴な娘ジゼルは、踊ることと、ロイスと名乗る青年に夢中になっている。だがロイスの正体は、身分を隠して村に通う貴族アルブレヒト伯爵で、彼には宮廷にバチルドという許嫁がいた。ジゼルに思いを寄せる森番ヒラリオンは、アルブレヒトの正体を疑い、隠された剣を見つけ出して真実を暴く。狩りで村を訪れた貴族一行のなかにバチルドの姿があり、アルブレヒトが婚約者を持つ伯爵であることが明らかになる。愛する人に裏切られた衝撃でジゼルは正気を失い、髪を振り乱して舞う「狂乱の場」の果てに、弱い心臓が耐えきれず息絶える。

月夜の森で列をなして踊る白い精霊ウィリたちの水彩イラスト
第2幕

深夜の森の墓地。

婚約前に亡くなった乙女たちの精霊「ウィリ」が、女王ミルタに率いられて現れる。ウィリは夜ごと森をさまよい、迷い込んだ男を死ぬまで踊らせる存在で、新たに仲間となったジゼルもこの世界へ呼び出される。ジゼルの墓を訪れて嘆くアルブレヒトの前にウィリたちが立ちはだかり、ミルタは彼に死の踊りを命じる。だがジゼルの愛は、精霊となってもアルブレヒトを守り抜く。夜明けを告げる鐘が鳴るまで彼を支え、ウィリの力が及ばぬ朝とともにジゼルは静かに消えてゆく。残されたアルブレヒトは、深い悔恨とともに独り立ち尽くす。

見どころ

第1幕「狂乱の場」

裏切りを知ったジゼルが正気を失っていく場面。先ほどまでの幸福な踊りの記憶を断片的になぞりながら崩れていく演技は、技術だけでなく深い表現力が問われる名場面。バレリーナの解釈が最も色濃く出る箇所で、ジゼル役の真価が測られる山場とされる。

第2幕のアダージョ(パ・ド・ドゥ)

精霊となったジゼルとアルブレヒトが踊る、この作品の核心。重力を感じさせない浮遊感のあるリフトとポール・ド・ブラで、もはやこの世のものではない儚さと、消えない愛情を同時に描く。ロマンティック・バレエの幻想美を象徴する、静謐で美しい二人の場面。

ウィリの群舞とミルタ

白いロングチュチュをまとったウィリたちが整然と隊列を組む第2幕の群舞は、コール・ド・バレエの精度が観客を圧倒する見どころ。冷酷な女王ミルタは高い跳躍と威厳ある存在感を求められる難役で、群舞全体の統一された美しさがこの世ならぬ世界を立ち上げる。

第1幕の村人たちの踊り

ぶどうの収穫を祝う明るく素朴な村の踊りは、悲劇へと向かう第1幕に生き生きとした色彩を添える。なかでも「ペザント・パ・ド・ドゥ」は技巧的な聴かせどころで、後半の幻想的な第2幕との明暗の対比が、物語全体の構成美を際立たせている。

主要登場人物

身分を偽り愛する想いを寄せる正体を暴く許嫁ウィリとして迎え入れる死の踊りを強いるヒラリオン森番アルブレヒト貴族ジゼルバチルドベルタジゼルの母ミルタウィリの女王
愛・恋家族・つながり対立・裏切り魔法・呪い
人物にふれると、その関係が浮かび上がります。※版により設定が異なる場合があります。
ジゼルのイラスト
ジゼル
踊り好きで心臓の弱い純朴な村娘。裏切りに正気を失って命を落とし、第2幕で精霊ウィリとなる主役
アルブレヒトのイラスト
アルブレヒト
身分を隠して村娘として暮らすジゼルに近づく貴族(伯爵)。許嫁がありながらジゼルを愛する
ヒラリオンのイラスト
ヒラリオン
ジゼルに思いを寄せる森番。アルブレヒトの正体を暴くが、第2幕でウィリに踊らされ命を落とす
ミルタのイラスト
ミルタ
ウィリの女王。森に迷い込んだ男に死の踊りを強いる、冷酷で威厳に満ちた精霊の支配者
バチルドのイラスト
バチルド
アルブレヒトの高貴な許嫁。狩りの一行として村を訪れ、その存在が悲劇の引き金となる
ベルタのイラスト
ベルタ
ジゼルの母。娘の弱い心臓を案じ、ウィリの言い伝えを村人に語り聞かせる

有名な場面・踊り

  • ジゼルとアルブレヒトの出会いの場面(第1幕)
  • ペザント・パ・ド・ドゥ(第1幕)
  • 狂乱の場(第1幕フィナーレ)
  • ミルタの登場とウィリの召喚(第2幕)
  • ジゼルとアルブレヒトのグラン・パ・ド・ドゥ(第2幕アダージョ)

初めて観る人へ

『ジゼル』は二つの幕の対比を意識すると一気に分かりやすくなります。第1幕は太陽の下の村が舞台で、生身の人間の恋と裏切り、そして悲劇を描く「現実」のドラマ。第2幕は月夜の墓地で、精霊ウィリとなったジゼルが愛する人を救う「幻想」の世界です。色彩豊かな前半と、白一色で統一された幻想的な後半——この明と暗の切り替わりこそ最大の見どころ。難しい筋を追わなくても、第1幕「狂乱の場」での感情の崩れと、第2幕の浮遊するような二人の踊りに注目すれば、物語の核心と踊り手の表現力が自然と伝わってきます。

豆知識

  • 「ウィリ」は婚約しながら結婚前に亡くなった乙女の精霊で、ドイツ・スラヴの伝説に由来する。詩人ハイネの著作が台本作家ゴーティエに着想を与えたとされる。
  • 初演でジゼルを創造したカルロッタ・グリジは当時のロマンティック・バレエを代表する花形で、本作は彼女の名声を決定づけた。
  • 作曲家アダンは『ジゼル』をわずか数週間で書き上げたと伝えられ、登場人物に旋律を割り当てるライトモチーフ的手法を用いている。
  • 白く長いロマンティック・チュチュとつま先立ちのポワントは、第2幕の精霊たちの非現実的な軽やかさを視覚化するロマンティック・バレエの様式美である。

上演時間・あらすじ・登場人物は上演する版によって異なる場合があります。観劇の際は、主催者の公式情報もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q.ウィリとは何ですか?
A.婚約しながら結婚前に亡くなった乙女の精霊です。夜の森に迷い込んだ男を、死ぬまで踊らせる存在として描かれます。ドイツ・スラヴの伝説に由来します。
Q.ロマンティック・バレエとは何ですか?
A.19世紀前半に生まれた、幻想的で叙情的なバレエの様式です。『ジゼル』はその代表作で、第2幕の白いロングチュチュ(ロマンティック・チュチュ)が象徴とされます。
Q.ジゼルの結末はどうなりますか?
A.第2幕、ウィリとなったジゼルが、自分を裏切ったアルブレヒトを夜明けまで死の踊りから守り抜きます。その愛が彼を救い、ジゼルは安らかに姿を消します。
Q.見どころはどこですか?
A.第1幕フィナーレの「狂乱の場」と、第2幕の幻想的なウィリの群舞・グラン・パ・ド・ドゥです。現実(第1幕)と幻想(第2幕)の対比が最大の魅力です。

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参考情報と更新履歴

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