Ballet Map.
白い衣装のニキヤと亡霊たちが月下でアラベスクを踊る『ラ・バヤデール』影の王国の水彩画

La Bayadère

ラ・バヤデール

寺院の灯りの向こう、裏切られた愛が影の王国で永遠になる。

作曲
ルートヴィヒ・ミンクス
初演
1877
構成
全3幕(版により全4幕)
上演
135

あらすじ

第1幕

寺院

古代インド。

寺院に仕える美しい舞姫ニキヤと、勇敢な戦士ソロルは、聖なる火の前で永遠の愛を誓い合う。しかしニキヤに横恋慕する大僧正が、二人の秘密を知って嫉妬に燃える。一方、藩主(ラジャー)は、娘ガムザッティをソロルと結婚させようと決めていた。

第2幕

婚約の宴

藩主の宮殿で、ソロルとガムザッティの婚約を祝う華やかな宴が開かれる。

踊りを命じられたニキヤは、悲しみをこらえて舞う。そこへ贈り物として花かごが差し出されるが、中には毒蛇が仕込まれていた。噛まれたニキヤに大僧正は解毒剤を差し出すが、ソロルへの愛を貫くニキヤはそれを拒み、息絶える。

第3幕

影の王国

ニキヤを失った悲しみに沈むソロルは、まどろみの中で幻を見る。

月光に照らされた雪山の斜面を、アラベスク・パンシェを繰り返しながら白い衣の亡霊(影)たちが一人また一人と降りてくる。その中にニキヤの姿を見出したソロルは、束の間、彼女と再会する。一糸乱れぬ群舞が続くこの「影の王国」は、古典バレエの純度の極致とされる。

見どころ

影の王国の群舞

32人(版により24人)の踊り手が、アラベスク・パンシェを繰り返しながら斜面をゆっくりと降りてくる登場は、バレエ史上もっとも荘厳な群舞の一つ。完璧に揃った隊形が幽玄な別世界を立ち上げ、コール・ド・バレエの実力が最も問われる場面である。

ニキヤの悲劇のヴァリエーション

婚約の宴で、愛する人の裏切りを前に踊るニキヤの踊りは、技巧の中に深い哀しみをたたえる。純愛に殉じるヒロインの心情を全身で表現する、ドラマティックな見せ場である。

ブロンズ像(黄金の神像)

第2幕で踊られる「ブロンズ像」の男性ヴァリエーションは、金色に塗られた神像が命を得て踊るという趣向。跳躍と静止のコントラストが鮮烈で、男性ダンサーの名技として単独でも上演される。

主要登場人物

ニキヤ
寺院に仕える舞姫(バヤデール)。ソロルと愛し合うが、裏切りと嫉妬の果てに命を落とす悲劇のヒロイン。
ソロル
勇敢な戦士。ニキヤと永遠の愛を誓うが、藩主の娘との縁談に引き裂かれる。
ガムザッティ
藩主の娘。ソロルとの結婚を望み、ニキヤと対立する。気高く華やかな踊りが見せ場。
大僧正(ハイ・ブラーミン)
ニキヤに横恋慕する高僧。嫉妬から悲劇の引き金を引く。
藩主(ラジャー)
ガムザッティの父。娘とソロルの結婚を取り決める権力者。

有名な場面・踊り

  • 第3幕「影の王国」の群舞(アラベスク・パンシェの登場)
  • ニキヤのヴァリエーション(婚約の宴/花かごの踊り)
  • ブロンズ像(黄金の神像)の男性ヴァリエーション
  • ガムザッティのヴァリエーション

この作品で出会う用語

初めて観る人へ

『ラ・バヤデール』は、悲恋の物語と、幻想的な群舞の美しさを味わう作品です。前半は「舞姫ニキヤ・戦士ソロル・藩主の娘ガムザッティ」の三角関係と裏切りのドラマ。人間関係さえ押さえれば筋は追いやすいです。そして最大の見どころが第3幕「影の王国」。白い衣の亡霊たちがアラベスクを繰り返しながら次々と降りてくる登場は、息をのむ荘厳さです。物語というより「動く絵画」としてその美しさに浸ってください。全幕か「影の王国」で終わるかは版によって異なります。

豆知識

  • 「バヤデール」とはフランス語で寺院に仕える舞姫のこと。作品はインドを舞台にした、ヨーロッパから見た東洋への憧れ(オリエンタリズム)の産物でもある。
  • 原典には、寺院が神々の怒りで崩壊しソロルも滅びる最終幕があった。20世紀にはこの幕を省いて「影の王国」で終える版が主流になり、後にマカロワ版などで神殿崩壊の幕が再構成された。
  • 「影の王国」は、作品全体を観たことがなくても、この場面だけは知られているほど独立して有名。バレエ団の格を示す試金石とされる。

上演時間・あらすじ・登場人物は上演する版によって異なる場合があります。観劇の際は、主催者の公式情報もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q.ラ・バヤデールのあらすじは?
A.寺院の舞姫ニキヤと戦士ソロルの悲恋の物語です。藩主の娘ガムザッティとの縁談と大僧正の嫉妬からニキヤは毒蛇に命を奪われ、残されたソロルが幻の中で亡霊となった彼女と再会します。
Q.「影の王国」とは何ですか?
A.第3幕で、亡きニキヤを悼むソロルが見る幻の場面です。白い衣の亡霊たちがアラベスク・パンシェを繰り返しながら斜面を降りてくる群舞で、古典バレエでもっとも荘厳な名場面とされます。
Q.版によって結末が違うと聞きました。
A.はい。原典には寺院が崩壊する最終幕がありましたが、20世紀には「影の王国」で幕を閉じる版が長く主流になりました。マカロワ版などは神殿崩壊の最終幕を再構成しています。
Q.バヤデールとはどういう意味ですか?
A.フランス語で寺院に仕える舞姫を指す言葉です。作品は古代インドを舞台に、ヨーロッパから見た東洋への憧れを背景に描かれています。

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